●ベネズエラ情勢でも Exchange Netflow に大きな変化はなく、市場は冷静さを保っている。
●過去の紛争でも、局地的な軍事衝突はビットコインに持続的影響を与えにくい。
●影響が大きいのは米中など経済大国間の構造的対立で、引き続きオンチェーンの観測が重要。
アメリカによるベネズエラ侵攻が報じられ、再び地政学リスクが市場で意識され始めている。中南米という地域性、エネルギー資源、そして米国の対外政策という文脈から、原油や為替、株式市場と並び、ビットコインへの影響を気にする声も少なくない。ただし、この種の局面で重要なのは、価格の上下そのものではなく、市場参加者が実際にどのような行動を取っているかを見極めることだ。
その判断において、最も有効なオンチェーンデータが Exchange Netflow(取引所ネットフロー)である。これは、ビットコインが取引所に流入しているのか、あるいは取引所から流出しているのかを示す指標だ。流入が増えるということは、売却の準備が進んでいることを意味し、逆に流出が続く場合は、保管・長期保有が選好されていることを示す。地政学リスクが本当に恐怖として受け止められた場合、価格の下落に先行して、この取引所流入が急増するケースが多い。
過去の紛争を振り返ると、この傾向は明確だ。ロシアによるウクライナ侵攻、スーダン内戦、イスラエル=ハマス戦争、イランとイスラエルの緊張激化といった局面では、ビットコイン価格は短期的に大きく揺れた。しかし、Exchange Netflow を見ると、持続的かつ大規模な流入が続いた例は限られている。特に2023年以降、市場は局地的な軍事衝突に対して以前よりも冷静に反応しており、ヘッドライン主導の売りが一巡すると落ち着きを取り戻すケースが増えている。
今回のベネズエラ情勢についても、現時点では同様の構図が見て取れる。価格は神経質に反応しているものの、取引所へのビットコイン流入が急増しているわけではなく、パニック的な売却行動は確認されていない。市場は警戒姿勢を保ちつつも、資金を一斉に引き揚げる段階には至っていないと言えるだろう。
一方で、過去にビットコイン市場へより大きな影響を与えてきたのは、局地的な戦争そのものではなく、中国とアメリカの対立に代表される経済大国同士の構造的な緊張だ。規制強化、制裁、資本移動の制限といったテーマは、Exchange Netflow を通じて明確な資金移動として表れ、価格にも持続的な影響を及ぼしてきた。
今回の事象が、単なる地域的な緊張で終わるのか、それとも経済や金融の構造に影響を与える局面へ発展するのかは、まだ判断できない。ただ一つ確かなのは、その兆候は価格よりも先にオンチェーンに表れるということだ。今のところ、市場は恐怖よりも様子見を選んでいる。ビットコイン市場は、依然として冷静さを保っている。
オンチェーン指標の見方
Exchange Netflow:ビットコインが取引所に流入しているか、取引所から流出しているかを示すオンチェーン指標。流入が増える局面は売却準備が進んでいる状態を意味し、地政学リスクが本当に恐怖として受け止められているかを判断できる。価格が下がっていても流入が限定的であれば、ヘッドライン主導の一時的な反応にとどまっている可能性が高い。
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