● 3月初旬のBTC反発は、米国現物ETFへの資金流入とデリバティブ市場のショートカバーが主因。
● オンチェーンは弱気要素(損失供給増)と強気要素(Coinbase Premium回復)が混在し、需給は再構築局面。
● 地政学リスク下でもBTCは有事アセットとして資金回帰が見られ、今後はETFフローと70K〜75Kの流動性が鍵。

2026年1月末から3月初旬にかけて、ビットコイン市場は大きなボラティリティを経験した。価格は一時60,000ドル台半ばまで下落した後、3月初旬に急反発し、約73,000ドルを回復した。本稿では直近約90日間の価格推移とオンチェーン指標、デリバティブ市場、ETFフロー、マクロ要因を整理し、この反発の背景を分析する。

まず、短期的な価格変動の引き金となったのは地政学リスクである。2月28日、米国とイスラエルによるイランへの軍事行動が報じられ、中東情勢の緊張が急速に高まった。この報道を受け、ビットコインは2月29日に約63,000ドルまで急落した。しかしその後、市場は急速に反発し、3月2日には70,000ドル近辺まで回復。3月4日から5日にかけては買い圧力が強まり、価格は73,000ドル台を回復した。

この回復の背景には複数の需給要因が重なっている。最も重要な要因は、米国の現物ビットコインETFへの資金流入である。3月初旬には数日間で数億ドル規模の資金が流入し、市場の需要を押し上げた。特に3月4日には単日で2億ドル以上の流入が確認され、ETFを通じた機関投資家の買いが価格反発の主要ドライバーとなった。ETFフローはスポット市場の需給に直接影響するため、今回の上昇局面では重要な役割を果たしたと考えられる。

同時に、デリバティブ市場でも構造的な変化が見られた。価格反発とともにオープンインタレスト(OI)が急増し、資金調達率(Funding Rate)はマイナス圏へ低下した。これは市場にショートポジションが多く積み上がっていたことを示している。結果として価格上昇に伴うショートカバーが発生し、強制清算の連鎖が上昇圧力を強めた。実際、3月初旬の数日間で数億ドル規模のショートポジションが解消されたと報告されている。

オンチェーンデータを見ると、市場構造にはポジティブな要素とネガティブな要素の両方が存在する。ネガティブな側面としては、90日実現損益比率(Realized Profit/Loss Ratio)が1.0を下回り、ネットワーク全体で損失確定が優勢な状態にある点が挙げられる。また、含み損状態の供給量も増加しており、価格反発局面では売り圧力が再び強まる可能性がある。

一方でポジティブな側面も見られる。特にCoinbase Premium Index(CPI)は、長期間マイナス圏で推移した後、直近でプラス圏へ回復している。これは米国市場での現物需要の回復を示唆する重要なシグナルであり、歴史的にもCPIのプラス転換は価格反発局面と重なることが多い。実際、今回もCPIがプラス圏を維持し始めたタイミングと、ビットコイン価格の反発がほぼ同時に確認されている。Coinbaseは機関投資家や米国資金の主要な取引拠点であるため、このプレミアムの回復は米国主導の現物需要が再び市場に戻りつつある可能性を示唆する。こうした動きは、現在の市場が単純な弱気トレンドではなく、「調整後の需給再構築局面」に入りつつある可能性を示している。

マクロ環境では、中東情勢の緊張が引き続き市場の重要なテーマとなっている。原油価格は一時的に上昇し、エネルギー市場の不安定さが世界の金融市場に影響を与えている。こうした地政学リスクの局面では、ビットコインは単なるリスク資産ではなく、資本移動や資産保全の手段としての「有事アセット」として扱われる場面も増えている。実際、紛争報道後の市場では短期的な混乱の後、ビットコインへの資金回帰が確認されている。

総合すると、今回の73,000ドル回復は主にETF資金流入とデリバティブ市場のショートカバーによって引き起こされた短期的な需給改善と考えられる。一方でオンチェーン指標は強弱が混在しており、市場は依然として移行期にある可能性が高い。

今後の重要な観測ポイントは、ETF資金フローの継続性、先物市場の建玉構造、そして70,000〜75,000ドル帯の流動性である。これらの指標が改善すれば、今回の反発がより持続的な上昇トレンドへ発展する可能性がある。一方で需要が再び弱まれば、ボラティリティの高いレンジ相場が続く可能性も残されている。

オンチェーン指標の見方

①Coinbase Premium Index(CPI):Coinbaseと他取引所のBTC価格差を示し、主に米国投資家の現物需要を測る指標。プラス圏は米国主導の買い需要、マイナス圏は売り圧力を示す。価格トレンドの先行指標になることが多い。

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②Open Interest(OI):先物・永久先物市場で未決済のポジション総量を示す指標。OI増加は新規ポジション流入、減少はポジション解消を意味する。価格上昇とOI増加は強気、急増後の清算はショート/ロングスクイーズの兆候となる。

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