● 世界的な長期金利上昇により、ビットコインは評価拡張が起きにくい制約下にある。
● 一方で実現時価総額は増加しており、オンチェーン需給は崩れていない。
● 現状は上値は重いが下値も限定されやすい、レンジ検証フェーズにある。
現在のビットコイン市場は、明確な上昇トレンドでも急落局面でもなく、調整を経たレンジ検証フェーズにある。方向性としては中立からやや弱気が優勢だが、内部構造を見る限り、単純なリスクオフ局面とは言い切れない。
この背景にあるのが、世界的な長期金利の構造的上昇だ。10年–20年フォワード国債利回りを見ると、日本を含む主要先進国で将来の金利期待が高水準に切り上がったまま推移している。これは一時的な金融政策ではなく、財政・インフレ・債務構造を反映した「将来の割引率」が上昇した状態を意味する。この環境下では、ビットコインのようなリスク資産に対する評価拡張は起きにくい。
ただし、価格だけを見て市場を判断するのは不十分だ。オンチェーン指標に目を向けると、異なる状況が確認できる。実現時価総額(Realized Cap)は価格が調整しているにもかかわらず、緩やかな増加を続けている。これは、短期的な値動きとは別に、取得コストベースでの保有が積み上がっていることを示す。
実現時価総額の増加は、レバレッジや短期投機ではなく、現物ベースの資金が市場に定着していることを意味する。過去の局面でも、価格が停滞する一方で実現時価総額が維持・増加している期間は、需給構造が急激に悪化しにくい傾向があった。エックスウィンリサーチでも、こうした局面は「上値は重いが、下値も限定されやすい中間フェーズ」と整理してきたが、結果として現在の市場状況と整合的である。
取引所フローや保有期間別の動向を見ても、短期保有者の積極的な買い戻しは限定的である一方、長期保有者による大規模な売却は確認されていない。これは、マクロ環境の逆風を受けつつも、ビットコインの内部需給が崩れていないことを示唆する。
重要なのは、現在の停滞を弱気転換と断定しないことだ。長期金利が高止まりする限り、強い上昇を前提としたシナリオは描きにくい。一方で、オンチェーン実需が維持されている限り、構造的な下落を前提とする見方にも慎重であるべきだろう。
現時点では、長期金利上昇という制約の中で、ビットコインは評価拡張を伴わずに需給の安定性を試されている段階、という見方がベースシナリオとなる。
ただし、実現時価総額の伸びが明確に鈍化し、同時に取引所流入が増加する兆候が確認される場合、この見方は見直す必要がある。
オンチェーン指標の見方
実現時価総額(Realized Cap):各ビットコインが最後に移動した時点の価格で評価した時価総額であり、市場参加者の実際の取得コストを反映する指標です。価格変動の影響を受けにくく、短期的な投機ではなく、現物ベースの資金流入・流出を把握できます。価格が調整しても実現時価総額が増加している場合、需給構造は崩れておらず、保有の積み上がりが進んでいると解釈されます。
New Atlas for Digital Assets ──
デジタル資産市場の「地図」と「コンパス」を目指して


