ブータンの特別行政区域であるゲレプー・マインドフルネス・シティ(GMC)は12月11日、物理的な金準備金で完全担保されたデジタルトークン「TER」を12月17日にローンチすると発表した。国家が保有する金をトークン化し、政府監督下の銀行が販売する世界初の仕組みだ。ソラナブロックチェーン上に構築され、世界初の政府支援による金担保デジタルトークンとなる。
TERは「宝物(treasure)」を意味するブータンの国語ゾンカ語に由来し、12月17日のブータン建国記念日にローンチされる。トークンは国家が保有する金をブロックチェーン上で表現するデジタル証書のような位置づけで、物理的な金準備金で完全に裏付けられる。高速処理と低コストを特長とするソラナブロックチェーンを採用し、オンチェーン準備金証明により透明性を確保する。
配布と保管はブータン初のライセンスを持つデジタル銀行DKバンクが独占的に担当する。投資家は第一段階でDKバンクを通じて直接TERを取得でき、機関レベルのカストディ環境で保管される。従来の金購入に近い安心感を持ちながら、オンチェーン所有権の透明性、国際送金の容易さなど、デジタル資産の利便性も享受できる。
GMC当局(GMCA)はマトリックスポートの子会社であるマトリックスドックをTERのトークン化技術パートナーに任命した。マトリックスドックは金トークン化における主導的地位と機関投資家グレードのインフラを活用し、TERを支えるトークン化基盤を開発する。
この発表は、GMC当局がグローバル暗号資産金融サービス大手のマトリックスポート本体に金融サービスライセンスを付与した直後に行われた。GMC当局の金融サービス担当マネージングディレクターのHB・リム氏は「GMCはデジタル資産に対し、革新的で透明性が高く、ブロックチェーン中心のハブを目指している。規制の明確性が我々の競争優位だ」と述べた。
GMCのジグドレル・シンゲイ取締役は「実物資産と主権国家の信頼を組み合わせ、価値ある資産をデジタル上で安全に表現する新たな基準を示す」とTERの意義を説明した。ソラナ財団のリリー・リウ氏も「国家が主導する高品質なアセットバック型デジタル商品の好例だ」と評価している。
DKバンクのユードン・チャンCEOは「GMCへの金融ゲートウェイとして、我々の使命は従来型とデジタル金融サービスを接続し、すべての人に使いやすく信頼できる金融商品を提供することだ。マトリックスドックが開発するインフラは我々の事業に不可欠で、効率的な国境を越えた取引の新しいパラダイムを可能にする」と語った。
マトリックスドックは、マトリックスポートグループ傘下で高品質な実物資産(RWA)へのアクセスを先進的なトークン化技術を通じて提供する主要プラットフォームだ。同社の旗艦商品XAUmは、99.99%純度のLBMA認定金で完全に裏付けられたトークン化金資産で、運用資産額で世界第3位の金トークンとなっている。
マトリックスポートのジョン・ゲーCEOは「金融サービスライセンスの取得は我々の基盤であり、GMCの技術的な未来を構築することが次の約束だ。国王陛下の先見的なリーダーシップを支援できることを光栄に思う」と述べた。
マトリックスドック責任者のエヴァ・メン氏は「この協力関係は、政府デジタル金融の進化における決定的な一歩だ。政府支援の金担保トークンの導入は、ブータン国民に力を与え、GMCを安定性と実物資産価値に基づくイノベーションのグローバルモデルとして位置づけることを目指す重要な手段となる」と述べた。
ゲレプー・マインドフルネス・シティ特別行政区域は、マインドフルネス、持続可能性、イノベーションを中心に据え、ブータン南部に世界クラスの経済ハブを創造する先見的な取り組みだ。同特別行政区域は、ブータンの伝統的価値観とグローバルに認められた法的枠組み、最先端の設計と技術を統合し、王国の豊富な再生可能エネルギー資源を活用して、総合的な発展のグローバルな模範となることを目指している。
今回のTER発表は、ブータンが近年進めている国家のデジタル主権強化政策の延長線上に位置づけられる。
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