東京都は17日、円建てステーブルコイン(SC)の社会実装に取り組む事業者を対象とした補助事業を発表した。補助額は1社あたり最大4000万円で、都内を拠点とする事業者が対象となる。小池百合子知事は同日の記者会見で、円建てSCの活用推進が「国際金融都市としての競争力を高めるために重要」との認識を示した。
ステーブルコインとは、円やドルといった法定通貨や金などの資産と価値が連動するよう設計されたデジタル通貨である。ビットコインに代表される法定通貨の裏付けを持たない暗号資産と異なり、価格変動が抑制される(ステーブル)点が最大の特徴だ。企業の海外送金コストの削減や、店舗が負担する決済手数料の低減に寄与するとされており、海外では新たな決済インフラとして急速に普及が進んでいる。
一方、現在世界で流通するSCの9割以上がドル建てとされており、円建てSCの存在感は国際的に極めて限定的な状況にある。東京都はこの現状を課題と位置づけ、円建てSCの普及を通じて「日本円のプレゼンス向上と東京の国際金融力強化」を図る方針を明確にした。
補助事業の対象となるのは、都内に本店または支店を有する事業者で、円建てSCの実装や実証検証を行う地域に都内を含むことが条件となる。補助率は、システム開発費などの対象経費の3分の2で、1社あたりの上限額は4000万円に設定されている。都は2026年6月30日まで対象事業者の募集を行う。
補助対象となる経費の詳細は今後公表される見通しだが、実証実験や技術開発を伴うプロジェクトへの支援が主眼に置かれているとみられる。
東京都がこうした施策を打ち出す背景には、国際金融都市としての地位確立を急ぐ戦略的意図がある。近年、シンガポールや香港をはじめとするアジア主要都市がフィンテック・デジタル資産分野での規制整備と企業誘致を積極的に進めており、東京もこれらに対抗する動きを加速させている。
ステーブルコインをめぐる国内の法整備も進んでおり、2023年施行の改正資金決済法によってSC発行の法的根拠が整備された。東京都の今回の補助事業は、こうした国の制度的枠組みと連動する形で、民間事業者による実用化を促進することを目的としている。円建てSCの普及が実現すれば、国際決済における日本円の利便性向上と、東京の金融ハブとしての競争力強化につながる可能性がある。


